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2016 立川シティハーフマラソン

2016年3月6日(日)

 早春の日曜の朝、寝静まった家の中で、私は一人起床し出かける支度をする。風向きや気象条件に敏感であるのは、おそらく職業柄、航空機の安全な飛行を担保するために奮闘する航空管制官とか、天候に左右される青果物の取引をされる市場関係者のような方々だけではなく(笑)、趣味の自転車乗りも、山男も、ランナーも、スキーヤーも天気予報には敏感である(はずだ)。

 私も神経質なくらいに一週間前から試合当日の気象条件を予測しようとしていた。しかし変わりやすいのが春の気象。一喜一憂しても仕方がないのだが、一週前には雨の予報だったので、雨のつもりでいた。昨年12月の調布も雨だったし、ランニングの大会が雨でもかまわないが、気温は気になる。 とはいえ試合に向けた練習はずっとその低い気温の下で行っていたわけだから、試合のときだけ低いわけでもない。とはいえ平年値より7度から10度低い気温というのは誤算であった。

  この、立川でのハーフマラソン、私は毎年毎年参加しているわけではなく、実に10年ぶりの参加である。しかし、10年ぶりとはいえ、1試合の緊張感とか、走ったときの感覚とか、そんな仔細なことまで記憶しているのは、おそらく、ランニングの試合としてはそこで一回打ち止めになって、ブランクが長かったこともあろう。また、年中行事ではないが、ランニングの大会はおおむね毎年同じ時季に開催されるから、同じ大会にくり返し出ているとあの年はこんな感じだったから、今年もこれでいけるだろうといった個人的な経験値が上がっていくということはある。

  そういう意味で言うと、10年前はタンクトップ(ノースリーブ)と短パンで走れるくらいの暖かさだったはずだが、今年はそうはいかなさそうだということ。加えて雨の予報。

ナーバスになっても仕方がないし、だいたいが気温はやや低めの方が(限度はあろうが・・)、シリアスなランナーの場合には記録がのぞめるとかいう。しかし、それは1キロメートルを3分台で駆け抜けるトップランナーの話。

私のようなへなちょこ中年ランナーは、ウエアへの気配りが欠かせない。寒ければ長袖のランシャツを着るし、タイツも場合によっては裏起毛の厚手のものを履いたりするから、試合のときにどのウエアで走るかが決まらないと支度ができないのである。ものの本には、何種類かウエアを用意し、現場であわせなさいというアドバイスをしているものもある。しかし根が横着なので、そんなことはしたくない。着替えは面倒なので、家を出るときには走るときのウエアを着て、 上から防寒のウエアを着込んで移動。走るときに防寒着を脱いで、試合が終わったらまた着る。それで済ませようとしたわけである。まあ、趣味でやっていることだから、人によってやり方はいろいろであろう。

 近頃目立って増えた女性ランナー(これは山も同様)がランニング時のファッションにこだわるのは分かる。しかし私のようなシニア・おやじランナーがファッションにこだわる意味はないはずだ(笑)。しかし、私の場合、昨年の夏に購入した、白地に赤と黒のラインの入った、アシックスのタンクトップシャツを着て、立川で走る、と昨年の秋から決めていたのである。それが、予期せぬ低温でウエアの変更を余儀なくされ、半袖ランニングシャツと、アンダーウエア、場合により、アームウオーマーということになった。むむ、これでは、「かわいいウエアが走るときのエネルギー」(川越学 誰でも4時間を切れる!効率的マラソンメソッド 池田書店 2014年 p.193 )という女性ランナーと、なんら変わることがないではないか(苦笑)。そんなガラでもあるまいに・・。

 ともかく、気温10度代の条件下、キロ6分程度で走って寒くないウエアを着て、その上からウインドブレーカーと、オーバーパンツを履いて家を出る。

ん、キロ6分?やけにゆっくりではないか?恥ずかしながら試合の3週間前にインフルエンザを罹患。おりしも受験の時季。私よりもさらに輪をかけてナーバスになっている受験生と、その親たちの大ひんしゅくを買っていたのだが、とはいえ、私だってナーバスである。なんといっても、私は職探し中である。 進学、就職、引越し、転職、転勤といった環境の変化はストレスの要因になろう。

しかし 受験でナーバスになっている受験生と、その親が神経質の競争をしてもはなから勝ち目がないのはわかっていながら、

『俺だって大変なんだ』

とかなんとか家族の前で発言して、ますますヒンシュクを買うのであった。

しまいには

「だって、お父さんは走って、無駄飯を食って、インフルエンザにかかって、たまに就職活動をして、なかなか仕事が決まらない・・・とか言ってればいいんだから気楽で良いよね・・・」

などという、家族たちのセリフにいちいちめげていたら、男なんてやっていられますか(笑)。まったくばかばかしい。どっちが大変だと思ってるんだ、まったく・・・。
 
閑話休題。

とにかく試合に向けて練習量を増やして心身にストレスがかかっているところに、ままならない就職活動のストレスが加わって、免疫が下がり、大したことないウイルスにやられたものと思われる。ワクチンですか?打ちましたよ、たしか。でもワクチンとウイルスで型が違ったら効かないでしょ?

そんなこんなで、試合前の自己管理の失敗により、テーパリング(直前に練習量を減らす)も何もなく、ほぼぶっつけ本番の試合となったわけである。

ぶっつけ本番ねぇ・・10年前もたしか試合の1か月前に、暗い公園で練習していて足をくじいて、満足な練習ができないまま試合に臨んだ。そのとき(月50km程度)よりは、今回(月100-150km)のほうがランの練習はできている。しかし、10年前には自転車で月に1000kmくらい乗って、それを何年も継続していたので、有酸素運動のための身体の基礎ができており、単にランの練習ができてなかったということ。

月に1000kmと聞いてもぴんと来ない方のために、時間で換算すると、1000kmを時速20kmで走ったとして、練習時間が月に約50時間。 これをランナーに置き換えて、キロあたり6分のペースを保って、月間50時間走ったとして、月間の走行距離が500kmですか?(何か計算違いしてますかね?)。ランとバイクでは、身体への負担の掛かりかた(特に関節など)がまったく違うと思われるので、単純に比較するのは意味がないだろうが、ランニングで月間500km走れてたら、私は、おそらく今、こんなところで職探しなんかしてません(笑)。

ともかく、10年ぶりの今回は、有酸素運動はランニングのみ。自転車は昨年2015年のツールド奥武蔵以来、まったく乗っていない。つまり、フィットネスレベルが10年前とは全然違うわけだ。加えて、10年分の加齢要素も加味すると、無謀な走りはできない。前回の調布同様、心拍数を利用した強度管理を徹底して行う。

 くり返しになるが、加齢、10年のブランクによるフィットネスレベルの低下、直前のインフル。それでも前回の調布から三ヶ月近く、自分なりに練習を積んでいるわけでいかにマイナス要因が多かろうと、前回より遅いというのは納得がいかない。1秒でも良いから、調布より良いタイムを記録したい。その思いはかなり強いものがあった。 とはいえ、試合は水物。脚力も水物(これは、何かのランニング関係の書籍に書いてあった・・おそらく白方健一さんの本だったと思う。)水物の試合をどうマネージして結果を出すか。ここは、ある程度、シニアの得意分野といえなくもないだろう。

 ともかく、 雨の予報は良いほうに振れそうだ。自分で餅を焼いてキナコだのあんこだのをまぶして、朝食とする。出走3時間前だから、消化は大丈夫だろう。そのほか身支度を整えて、西武新宿線の最寄り駅に6時に着くように向かう。日曜ダイヤなので、ずいぶん待たされる。使い慣れないから意識していなかったが、各駅停車しか止まらない駅だったのだ。急行が通過。しばらくして田無どまりが来て、さらに田無で本川越行きに乗り換えて、東村山で国分寺行きに乗り換えて・・日曜の朝だったし、クルマでも良かったかなと思ったが、駐車場が確保できるか分からないし、私の知人が良くやっているように、自転車で会場まで行ってしまうというのもありだろうが、ナーバスになっていて、そんな気にもなれなかった。

 しかし今回、久々にご一緒させていただいたベテランランナーのI崎さんは、自転車で会場に来られると聞いた。私が西立川の駅について、改札を慌てて走って出ると、すでに自転車を押して、会場である国立昭和記念公園の西立川口に向かわれているI崎さんをお見かけして、大きく手を振って合図を送ったら気づいて下さった。昨年の奥武蔵以来である。ほどなくI嵐さんともお会いできた。待ち合わせに遅れそうになりながら、電車の中からO武蔵爺!さんにもメールで声掛けをさせて頂いた。私の都合で、自転車の中断はあったものの、奥武蔵というイベントを通しては20年近いお付き合いをさせて頂いている。 もちろん、マラソン、ランニングは個人競技だけれど、人と人のつながりは大事にしたい。それは自転車競技をしていた頃も、今も同じ。もっと言えば、山歩きをしていた頃から変わらない。一期一会の出会いを大事にしたいもの。

 そういう意味では、今回、上記の私がすでに存じ上げている方々のほかに、Oさんも来場された。 東京・糸魚川間のサイクリングイベントを何度も完走されている猛者である。そして、前の職場の自転車部の方々も 。どんどん広げよう、立川マラソンの友達の輪(笑)。冗談はともかく、言うまでもないことではあるが、仲間の存在、人と人のつながりは重要です。

相変わらず前置きが長くて恐縮です。曲がりなりにも?参戦記録なのだから、本題の大会について記述せねばならない(笑)。「本大会は、陸上自衛隊立川駐屯地のご協力により、全国でも数少ない滑走路から横40メートルに並んでスタートし、多くの市民が沿道に立つ市街地を抜け、日本一の来場者を誇る国営昭和祈念公園内の起伏に富んだコースを走り、フィニッシュを迎えるという、ほかにはない特徴を持っています。また、そのコースは、学生ランナーの憧れである箱根駅伝予選会のコースと多くの部分で重複しており、毎年、日本トップクラスの学生ランナーにも数多く参加いただいております。」(大会会長、立川市長、清水庄平氏の挨拶、大会パンフレット p10)

大会の特色はそういうことで、実際に走ってみるとどうだろう。今回、O武蔵爺!さんが居られたので、ウインドブレーカーを羽織っておいて、スタート直前に渡して預かっていただくという芸当ができた。そうでなければ、走るための薄着の服装で、スタート地点で震えているか、もしくは、脱いだ衣類を自分で持って走るしかなかっただろう(実際にトレラン用のザックを背負って走っている人を見かけた)。

 今回は、スタートの合図のピストルの音が聞こえなかった。加齢により、私の耳が遠くなり、聞こえなかったのか(笑)。そんなわけはない。一緒に走った仲間もそう口をそろえて言っていたから私の耳の問題ではない。いずれにしても、スタートの後、選手は駐屯地内の滑走路を一周半して、駐屯地の外の公道にいったん出る。10年前に比べて参加人数が増えているのか、集団がバラけない。10年前は、駐屯地から公道に出る前に、そのときの自分のペース(キロ4:50くらい)に合った集団に加わることができた。今回は、いつまで経っても大勢の群集の中を走っている感じだ。いや、自分のペースが遅いからだ。今回の戦略も、前回の調布同様、いわゆるネガティブスプリット、最初ゆっくり、後半に追い込む。そのパターンで行こうと決めている。最初の5kmはキロ6分を少し切るくらい。タイム別の選手の人数分布図をみたことはないけれど、おそらくキロ5分弱と、キロ6分弱では、選手の分布がまるで違うのだろう。それくらい走っているときの景色が違う。でも焦ってはいけない。十分な練習ができていないのだから、前半を抑えていけ。完走は当然として、昨年の調布のタイムを一秒でも良いから更新したい。それには頭を使って走らないといけない。ということでペース管理は徹底してやっていたつもり。作戦では前半、ゆっくり目で入っているから、後半余裕が出るだろうと。ところが、10kmを過ぎて、砂川五差路からコースが西に向かうあたりでメンタル的にスタミナ切れ状態に近くなった。

もうちょっとで折り返し点、でも向かい風が強くて、気持ちがなえる。向かい風と言っても、自転車ロード競技ほどの風の影響はないはず。この日は風が強いといっても、数メートル程度の風だから、風が強くて、前に進まないとかそういうレベルのお話ではなくて、あくまで選手本人の感じ方の問題であろう。ともかく、中間点近くでの私の感覚は、前半ペース抑え目で行ったにもかかわらず、精神的なスタミナ切れという状態。脚はまだまだなんとかなりそうだが、メンタルがこれでは(苦笑)。困ったものだ。

考えてみると、10年のブランクの間に試合の勘とか走り方のテクニックのようなものは忘却のかなたである。一からやり直しに近い。10年前どうやって練習していたんだっけ。そんなことを思い出すよりも、試行錯誤してベストの方式を見出すほうが早いと判断せざるを得なかった。

13km地点あたりで、コースは再び公園の中に入る。どうも走りに集中できていない。よくない傾向だなぁ。試合慣れしていないというよりも、コンディションがよくないのかな。

14kmの先の給水のあたりでトイレに入る。すこし回復。ゼリーをもう一個食べて、水を飲み、気合を入れなおす。ペース管理してきたから、さほどきつくはないけど、さりとてペースを上げるほど余力はない。公園の中のちょっとした起伏がこたえる。まだまだ走力が足りないな。

 

20km、ラストスパートをかけたいが、それどころではない。脚がいっぱいいっぱいである。それでも必死の思いでペースを上げる。調布のときのような余裕はまったくなし。ふくらはぎがつりそうになりながら、ゴール。

記録: 1時間58分31秒。

 

タイム的にもう少しなんとかしたかったところではあるが、それよりも10年ぶりの復帰戦が無事終わった安堵感に包まれて会場を後にした。 

 

気象条件: 曇り、ときどき晴れ、気温(摂氏。値は最低/最高を示す。地点は東京、データは翌朝の毎日新聞・朝刊より) 最高気温9.0度/最低気温 3.1度  湿度71% (平年値17.3/12.3)

 

 

ウエア:上:アシックス・半袖ジップシャツ+袖なしアンダーシャツ

    下: アシックス・+ウーヴンショーツ

    靴下:RxL

    帽子: アシックス・キャップタイプ

    グローブ:デサント・ランニング用

    カーフサポート:ザムスト LC-1       

シューズ: ミズノ・ウエーブライダー19SW  

 
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